救命救急

診療体制

自己完結型救命救急センター

メディカルラリーとは
当センターの最も大きな特徴として、「自己完結型」の救命救急センターであることがあります。「自己完結型」とは「ER型」と相反する診療システムであり、救命センター内で、患者さんの治療を完結させるということです。当センターのスタッフは、救急専門医以外に、それぞれのサブスペシャルティの専門医を取得しています。その各専門医が診療チームを作り、治療のサポートを行っています。この診療システムは診療科の垣根を超えたチーム医療を発揮でき、迅速な治療を必要とする重症患者に対してより円滑に治療を進めることができます。また、場合によっては、特別な専門家を当院へ招聘し手術を依頼することもあります。当センターで研修する後期レジデントは、ある程度の経験を積めば、各自の興味のある診療チームに入り、より専門的な経験を積むことも可能です。

診療内容

心・血管治療チーム

心・血管治療チーム
急性冠症候群・重症心不全・致死性不整脈・肺動脈塞栓症などの治療を担当しております。ほとんどすべての症例が緊急の検査・治療となっています。当センターはドクターカーを有しており、病院前の段階で、カテーテル治療が必要であると判断した場合、直接血管造影室へ入室し、早期の冠動脈の再灌流や経皮的人工心肺補助装置の挿入に努めております。
2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
PCI 89 119 150 134 92
VA-ECMO 38 46 54 30 30
VV-ECMO 7 8 5 9 2
IABP 34 45 57 41 31
ペースメーカー 9 21 27 19 15
IVCフィルター 3 5 8 4 5

急性期外科(Acute care surgery)チーム

心・血管治療チーム
主に重症体幹部外傷、急性循環不全を伴う急性腹症、食道破裂・縦隔膿瘍・壊死性筋膜炎などの重篤な疾患の緊急手術を担当しておりますが、急性虫垂炎や急性胆嚢炎などの比較的安定した状態の緊急手術も積極的に対応しております。今後は、当院外科との連携をさらに深め、手術件数の増加と診療の質の向上に努めていきたいと思っております。
2022年度 手術件数(内因性疾患)
肺部分切除術 16(胸腔鏡:16)
大網充填術 6(腹腔鏡:2)
小腸切除術 18(腹腔鏡:2)
イレウス解除術 29(腹腔鏡:12)
OAM 9
結腸切除人工肛門造設術 16
虫垂切除術 6(腹腔鏡:4)
胆嚢摘出術 10(腹腔鏡:2)
試験開腹術 7
ヘルニア根治術 5
膿瘍ドレナージ・デブリードマン 2
その他 13
総数 137

注)外因性疾患の手術件数については外傷診療に記載

整形外傷チーム

当センターでは以下の整形外科外傷に対して初期治療から根治的な手術、術後早期のリハビリテーションまで、一貫した治療を行っております。

開放骨折

例え開放創が小さくても軟部組織の損傷が高度な症例も経験します。当センターでは開放創の部位、大きさに関わらず全ての開放骨折を積極的に受け入れております。

多発外傷に合併する四肢外傷

多発外傷ではしばしば治療の優先順位を決定する必要があり、それがPreventable trauma death(防ぎえた外傷死)を回避する非常に重要なポイントとなります。さらに四肢・骨盤外傷においてはPreventable trauma disability(防ぎえた外傷機能障害)を回避するための治療戦略が求められます。救命と機能障害の回避、それぞれの視点を治療の初期から検討する必要があり、重症外傷の患者さんを救命すること、なおかつ早期社会復帰の実現を目標としております。

早期の治療介入が必要と判断される骨折

高エネルギー外傷に伴う四肢外傷では高度の軟部組織損傷、合併するコンパートメント症候群など、一刻を争う深刻な事態に陥ることがあります。
当センターでは関節近傍骨折や転位が大きい長管骨骨折に対しては緊急手術を行っております。特に足関節周辺骨折に対しては初回手術で創外固定を行い、待機的に根治的な手術を行うStaged operationを積極的に行っております。

骨盤骨折

骨盤骨折は生命を脅かす重篤な出血を来すのみではなく重度の機能障害を残す損傷です。当センターでは初期治療の時点から骨折に対する根治的な手術を考慮した治療戦略を立てています。
骨盤骨折 骨盤骨折2
注)手術件数については外傷診療に記載

脳神経外科チーム

当センターでは2016年6月より急性硬膜下血腫・急性硬膜外血腫・脳挫傷などの重症頭部外傷診療の充実とともに、急性期脳梗塞・脳出血・くも膜下出血といった脳卒中診療を開始しております。
注)手術件数については外傷診療に記載

血管内治療チーム

当センターにおける血管内治療では、救急疾患の特殊性を理解したうえでIVR (interventional radiology ; IVR)を施行する、いわゆる“救急IVR医”の存在が不可欠です。特に重症外傷診療においては、外傷治療に精通していなければ、質の高い外傷IVRは成し得ません。平時から杉浦孝司先生(彩都紘会病院 放射線科)に師事し、主にTACE(trancecatheter arterial chemoembolization:肝動脈化学塞栓術)を定期的に共に行い、技術と知識の維持と向上を行っています。当センターでは、外傷以外では、消化管出血や喀血など、疾病救急にも幅広く対応しています。

血管造影件数
血管造影件数 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
頭部 21 30 13 3 2
胸部 6 8 6 10 13
腹部 40 25 50 39 25
骨盤 9 12 12 16 8
その他 4 2 7 4 0

中毒診療

当センターでは、入院症例だけでも年間150例以上の急性中毒(急性アルコール中毒は除く)の治療を行っており、症例数は大阪府下で最多、全国でも有数の多さです。また、救命救急センターという特性上、搬送される症例は重症度が高く、気管挿管や血液浄化療法、特異的拮抗薬の投与などを要する重症中毒症例が全体の3分の1を占めます。診療においては、AACT/EAPCCTや日本中毒学会などの診療ガイドラインを参考にしつつも、症例経験をもとにした、当センターならではの診療指針も確立しており、中毒学会などでの提言も精力的に行っております。

熱傷診療

熱傷については、軽症熱傷から年間数例~10数例程度、急性期の気道・呼吸管理や大量輸液、その後、連日の洗浄処置やデブリードメント、頻回の植皮手術を要する重症熱傷を担当しております。重症熱傷に対しては、担当医のみでなくセンター全体で連携し、形成外科専門医の協力を得ながら創部のケアから手術に至るまで行っております。

外傷診療

当センターでは外傷初期診療ガイドラインに準拠した外傷診療を行っており、「防ぎ得た外傷死(Preventable Trauma Death)」の減少に努めています。わが国では、銃創などの鋭的な外傷よりも、交通外傷などの鈍的な外傷が圧倒的に多く、複数の診療科を必要とする多発外傷が多い傾向にあります。当センターでは、異なる専門性を持つスタッフが治療の優先順位を検討しながら、場合によっては複数箇所の治療を同時に診察・治療を行うことが可能です。このようにして、できるだけ多くの命を救命することを心がけております。また、海外での外傷手術研修プログラムについても現在検討中です。

年間外傷入院患者数

2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
総件数 595 606 708 555 541
ISS16以上 221 237 269 211 196

AIS3以上の件数

2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
胸腹部 12 13 17 19 9
胸部 145 161 157 147 133
腹部 35 33 46 45 34

※胸部・腹部数と胸腹部数は重複あり

手術件数(2018年4月~2022年3月)

総計 頭部 頸部 胸部 腹部 四肢・骨盤 その他
2018年度 243 16 1 10 12 196 8
2019年度 205 17 2 18 13 150 5
2020年度 239 24 6 9 19 172 9
2021年度 230 6 4 6 23 177 14
2022年度 262 3 0 8 13 222 16

Midnight Journal Club

淀川キリスト教病院、大阪医科薬科大学病院と千里救命救急センターとの緩めのジャーナルクラブです。

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